突然に消防署から立入検査の連絡が来たり、消防署から職員が訪れてくることがあります。立入検査や査察といって建物を防火上の観点からチェックされます。対策方法を事前に把握して備えておきましょう。この記事では、消防署の立入検査の流れとチェックされるポイントについて解説します。
消防署の立入検査とは
(消防法第4条)
消防署の職員が建物に立入り、防火上の管理状況などを検査することを言います。立入検査では、消火器や屋内消火栓などの消防設備の確認や、避難経路の障害物の有無など、消防法令に基づいて検査が行われます。
立入検査の頻度は?
立入検査が行われる頻度に関しては、消防法令による定めはありません。
そのため、各市町村の消防本部ごとに頻度の基準があるという認識で問題ありません。
基本的には不特定多数の人の出入りがある所ほど頻度が高く、特定の人しか出入りしない所ほど頻度はが低いという感じになっている場合が多くなっています。
例外は消防用設備が法令どおりに設置されていない建物や消防用設備の点検や報告を怠っている建物、防火管理ができていない建物などは頻度が高くなってくる傾向にあります。
頻度が高い所は年に1回、頻度の低いところでは3〜5年に1回という感じでしょう。
消防法令に適合していない所は1年に2回、3回と来る場合があります。そして適合しないままだと、営業ができない状態にされることがあります。
消防用設備点検・報告とは
(消防法第17条3の3)
消防用設備などを設置する建物は、半年ごとの「機器点検」と、1年に1回の「総合点検」を行います。そして、建物の用途によって、点検の結果を消防署に報告する頻度が変わってきます。
特定防火対象物 (飲食店、ホテル、物販店、病院など) | 1年に1回以上 |
非特定防火対象物 (工場、倉庫、事務所など) | 3年に1回以上 |
消防設備の点検や点検後の報告をしないまま放置していると、消防署から目を付けられる可能性があります。
消防設備の点検は、資格が無くても点検を行える場合もありますが、規模・用途によっては有資格者による点検が必要になってきます。
消防設備点検は専門的な知識と技能が必要になるため、自分で行うのは非常に困難です。
消防設備点検を行う場合は、専門知識を有する業者に依頼する様にしましょう。各都道府県ごとに「〇〇県消防設備協会」という組織があり、会員の業者であればおおむね問題ないでしょう。
業者に依頼すれば、知識が必要な消防設備点検の実施、点検報告書の作成を行なってくれます。消防署への報告なども併せて行なってってもらえる場合もあります。
立入検査の流れ
消防署の立入検査が実際にどのような行われるのか解説します。
- 事前通知
- 立入検査
- 検査結果の通知
- 改善計画書の作成(不備があった場合)
- 不備事項の改善(不備があった場合)
1.事前通告
電話、郵送、メールなどで立入検査を行う旨の連絡がきます。日程について打ち合わせをして立入検査を受けるようにしましょう。時間を指定してくる場合も多いですが、都合のいい時間で調整して問題ありません。正当な理由がないのに拒否していると処罰の対象になる場合があります。「この日は都合が悪い」、「今月は忙しいから来月の何日にして欲しい」などは正当な理由なので問題ありません。
以前は立入検査は「事前通告をして営業時間内に行う」などの制約がありましたが、現在は24時間事前通告なしで行うことが可能となっています。法令上事前通告をする必要性がないため、事前通告なしの「抜き打ち」で行う場合もあります。しかし、深夜の事業所に立入検査に行くことは基本的にありません。
抜き打ちで立入検査が実施される可能性が高いものは以下のような場合になります。
- 事前通告によって法令違反の実態が正確に把握できなくなる(検査の時だけ改善することがあるため)
- 事前通告をしているのに返信しない(結果的に抜き打ちになる)
- 法令違反をしている建物を見聞きしたとき(噂レベルでも立入検査します)
基本的には法令を遵守しようという意思がある建物に、抜き打ちで立入検査に行くことはありません。連絡がつかない場合や、消防設備点検の報告が長期間ない場合、法令違反の可能性が高い建物には抜き打ちで立入検査に行く可能性が高くなります。
2.立入検査
消防職員が建物を訪れ、立入検査を実施します。
まず書類のチェックを行われます。消防関係書類をまとめて管理しておくようにしましょう。消防用設備等点検結果報告書、防火管理者が必要な建物は消防計画や訓練関係の書類も整えておきます。書類チェックは省略する場合もあります。
建物の増改築の状況など口頭での質問もされるため、状況を把握しておくか、詳しい人に同行をお願いしておきましょう。
建物を案内します。消防設備、避難経路、火気を使用する場所、消防に関する届出がされている場所などの維持管理状況について確認を行います。
3.検査結果の通知
検査が終わったら、「立入検査結果通知書」が発行されます。即日発行される場合もありますし、後日発行される場合もあります。
立入検査で法令違反があった場合は、この立入検査結果通知書に指摘事項が記載されています。
4.改善計画書の作成(不備があった場合)
指摘事項があった場合、法令違反や不備があったところを改善するための改善計画書を作成して、管轄消防署に提出しなければなりません。改善計画書は2週間程度で提出するように求められる場合が多いようです。改善が大規模で見積に時間を要する場合で、現状で改善が進んでいない場合でも、「屋内消火栓の不備については〇月〇日に〇〇(業者名)に見積もり依頼」など具体的に記載して期日までに改善計画書を提出すると良いでしょう。
5.不備事項の改善(不備があった場合)
指摘された不備事項で即時改善できるものは順次改善していきましょう。
- 避難経路の不要な物品
- 消防設備業者に連絡(点検・設備の改修)
- 防火管理講習の申し込み(防火管理者不在の場合)
- 消防計画の作成(作成されていない場合や変更がある場合)
- 消防設備点検の報告(書類がある場合は即日、消防署へ届け出ると好印象)
注意事項
指摘事項がある場合は速やかに対応しましょう。建物の用途によっては消防用設備が設置されていないなど、重大な消防法令違反をしている場合は、消防本部のホームページで全世界に公表されてしまう場合もあります。
ここ数年、各消防本部の消防法令違反に対する対応は厳しくなっています。以前なら行政指導の範囲で継続で指摘していたものでも、改善命令など行政処分として対応する場合も増えています。つまりは営業停止や罰金の対象になってきます。
また火災による被害が発生した場合は、刑事でも追及されることにもなります。
立入検査の主な確認事項と対策
立入検査でチェックされるポイントは消防用設備と防火管理の状況です。これらと立入検査前の対策は以下のとおり。
消防用設備
設備名 | 対策 |
消火器 | 取り扱いやすい場所にあるか 破損はないか 標識はあるか |
屋内消火栓 | 消火栓の扉の開閉障害はないか |
スプリンクラー | 模様替えなどで散水障害になっていないか |
自動火災報知設備 | 警戒区域図が見やすい所にあるか |
誘導灯 | 模様替えなど視認障害になっていないか |
防火管理
項目 | 対策 |
避難経路 | 避難経路に障害物は無いか |
避難口 | 避難に支障のある施錠はされていないか |
喫煙所 | 吸い殻は溜まっていないか |
給湯室 | 火を使用する場所に可燃物は無いか |
以上のことをやっておくだけでも、日頃の管理ができている様に見せる事ができます。
立入検査中にわからない事があればどんどん質問しましょう。根拠法令も併せて質問しましょう。あとで自分で調べようとしても時間がもったいないです。また消防用設備の使い方がわからない場合も聞いてみましょう。
まとめ
消防署の立入検査は消防用設備の維持管理状態や防火管理の状況、書類の管理状況など消防法令に基づき行われます。
立入検査で法令違反があり違反が継続するようであれば、厳しい罰則もあります。
日頃から消防用設備や避難通路の管理を行い、防火体制をしっかりと整えておくことが重要になってきます。
しかし、消防関係の法令は一般の方には理解し難いことも多いため、難しいのが現状です。
信頼できる専門業者に依頼するのがオススメです。
また、あえて消防署に「立入検査に来てほしい」というのも一つの手段かもしれません。立入検査を受け入れて指摘事項を改善していくというスタイルです。本来は防火管理というものは自主的に行うものですが、業務多忙の中、「消防署の立入検査に備えておかないと」や「いつ来るんだろう。何を指摘されるんだろう」とモヤモヤするよりさっさと受け入れて対応した方が効率は良いと思います。
立入検査で指摘事項があったとしても、命まで取られるわけではないので、気楽に立入検査に臨んでみて下さい。
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